研究科長ご挨拶

国立大学法人長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科長
橋爪 真弘

熱帯医学・グローバルヘルス研究科(TMGH)は、2015年に長崎大学が設立した、日本初の「熱帯医学とグローバルヘルス」を専門とする大学院です。感染症研究と国際協力に長い伝統を持つ長崎大学の豊かな蓄積を活かしつつ、地域医療や公衆衛生、国際保健の経験を融合させ、地球規模の健康課題に挑む拠点として発展してきました。

21世紀の公衆衛生は、感染症の再興や新興感染症、気候変動をはじめとする地球環境問題に伴う健康影響、非感染性疾患の増加、さらに国内外における健康格差といった複雑で多面的な課題に直面しています。これらを克服するためには、人の健康だけではなく「地球の健康」──すなわちプラネタリーヘルスの視点が不可欠です。人類の健康と地球環境の健全性は切り離すことができず、持続可能な未来を実現するためには両者を一体として捉える新しい学際的知が求められています。

TMGHの教育と研究は、まさにこのプラネタリーヘルスの理念を実践する場です。すべての講義は英語で行われ、世界各国から学生と研究者が集い、真に多文化的な学習環境を形成しています。とりわけ、世界屈指のグローバルヘルス拠点であるロンドン大学衛生・熱帯医学大学院(LSHTM)とのJoint PhDプログラムは、国際的に高度な研究と人材育成を実現する本研究科の大きな特色です。また、アジアやアフリカでのフィールド研修、日本国内の地域社会との協働を通じ、座学にとどまらない学びを提供しています。博士前期課程では臨床熱帯医学、国際保健、基礎・実験医学など多様なプログラムを整え、博士後期課程では多くの国際共同研究の下で先端研究を推進し、グローバルに活躍できるリーダーを育成しています。

さらにTMGHは「グローカル」な視点──地域に根ざしながら世界に発信する姿勢──を重視しています。長崎は歴史的に「海外への窓」として世界に開かれてきましたが、これからのTMGHは「発信地」として、ここから地球規模の健康を支える知と人材を生み出します。高齢化や災害医療といった日本特有の課題と、熱帯・途上国における感染症や開発課題を結びつけることで、普遍的で持続可能な解決策を世界に提示していきます。

私たちが求めているのは、「世界をよりよくしたい」「人と地球の未来を守りたい」という志を持ち、それを行動に移す勇気のある人です。感染症や熱帯病に挑みたい人、疫学やデータ解析で社会課題を解決したい人、国際機関やNGOで最前線に立ちたい人、日本の地域医療と世界をつなげたい人──その多様な志をTMGHは全力で支えます。

TMGHでの学びと経験は、必ずや世界の人々の健康と幸福、そして地球全体の健全性に貢献する力となるでしょう。どうぞ私たちと共に学び、研究し、挑戦し、人と地球の健やかな未来を築いていきましょう。

PAGE TOP