よくわかるSDGs講座シリーズ | アジア・アフリカの保健医療の現場を中心に、SDGsの全体像を習得し、企業・教育現場・市民社会などでSDGsを推進するためのヒントを探すための講座シリーズです。

パネルディスカッション4 外国人との多文化共生

見原礼子(長崎大学多文化社会学部准教授) ×  上川陽子(衆議院議員 自民党持続可能な開発目標(SDGs)外交議連会長)



【見原】  日本国内において、「外国人との共生」がSDGsの文脈で議論される機会はこれまで多くなかった。 だが、日本政府作成の「SDGs実施指針」においても、外国人の人権尊重をテーマとした活動に取り組むことで、相互に尊重し合う共生社会を実現するということが明確に記されている。 また、静岡県浜松市が多文化共生の取り組みを評価されたことにより「SDGs未来都市」の一つとして認定されるという動きもある。今後、このような施策や事業の発展的な展開を通じて、 「外国人との共生」をより積極的にSDGsと結び付けて行くことは、日本がSDGsの推進を牽引するにあたって大きな意味のある行動である。 国際的な移民の定義を踏まえれば、日本がこれから進めようとする政策も国際的には移民政策であるとみなされる。 SDGsを推し進める日本が、国際社会における移民の定義と解釈を真摯に受け止め、SDGs達成に向けた移民・移住にかかわる取り組みに積極的に参画することが望まれる。 2018年12月に採択された国連「移住グローバル・コンパクト」は、法的拘束力はないものの、移住に関する初の国際的な協力枠組みであり、 SDGs達成に向けた移民・移住にかかわる取り組みの一環としても位置づけられる。日本国内では,「移住グローバル・コンパクト」に関する国民的議論はほとんど展開されなかった。 日本政府が移民に関して国際的に合意したのはいかなる内容であり、どのようなことが求められているのか、国内で検証し議論していく必要があるだろう。
  「これから日本が受け入れるようとしているのは、そしてすでに日本に在住する外国出身者は、生活者としての人間である」という事実の重みを私たちは十分理解しているだろうか? 在日外国人に対する支援策の推進は当然必要な取り組みであるが、受け入れる社会の意識も変わっていかなければ「共生」にはなりえない。欧州の経験を踏まえると、 社会の意識の変革には痛みを伴うこともあるし論争も生む。しかし外国人・移民を受け入れる以上,それは必要な論争である。生活者としての外国人・移民の文化や宗教の理解に向けて、 大学等の高等教育研究機関が担いうる役割がある。他者の文化や宗教理解に留まることなく、 共に暮らす隣人の文化や宗教の多様性や複雑性と対面する状況を想定した議論の場を大学等の教育研究機関が開放し、産学官民連携のもとで、 市民とともに議論を進めていくことが必要ではないか。欧州の大学等研究機関では、こうした取り組みが数多く進められてきた。 日本の「多文化共生施策」を国際比較の視点から見ることも有益である。例えば、移民統合政策指数(MIPEX)によると、欧州を基準とした移民政策を日本に当てはめた場合、 差別禁止と教育という二点においてきわめて低い指数となっている。この両分野は、これからの日本が健全な多文化社会として機能していくにあたっての鍵となる両輪であり、 更なる整備が不可欠である。差別禁止については、「ヘイトスピーチ解消法」を出発点としつつ、国際約束の中で、多文化社会にとって不可欠となる仕組みを再点検し、 取り入れることの是非を議論していくべき。教育については、①外国人生徒の就学へのアクセスが十分でない状況を改善していくこと、 ②外国人生徒の母語及び母文化を学習する権利について検討すること、③文化の多様性を踏まえたカリキュラムや時間割の設定、異文化理解教育の導入など、 学校全体の改革といった点が今後の中長期的課題となるだろう。

【上川】  地球で最も脆弱な北極圏では毎日大規模の氷河が解け生態系に深刻な影響を及ぼしている。世界規模で異常気象による自然災害等が頻発し、 北極圏に生きる先住民族イヌイットの暮らしも危機に晒されている。海洋国家日本としても、誰一人取り残さないを理念とするSDGsの考え方に基づく取り組みが必要と考え、 SDGs外交議連を立ち上げた。外国人の課題は、出入国管理(ボーダーコントロール)の視点で扱われ、生活者としての外国人の視点は重要と認識されてきたものの、 国が責任をもって総合的施策を打ち出すまでに至らなかった。本年4月新在留資格「特定技能1号・2号」の施行を機に国としての総合的施策が策定され、 司令塔機能として出入国在留管理庁がスタートすることになった。多文化共生については、欧米諸国の移民問題と比較されることが多い。 2001年衆議院厚生労働委員会派遣でトルコ移民を受け入れたドイツ事例を視察した。1960年代に受け入れ開始後受け入れ停止、トルコに帰国したケースもあるが、 視察当時約200万人のトルコ人が在留。毎年宗教家と教育者を各1,000人規模でトルコからヨーロッパを中心として国々に派遣し母国文化維持のための教育を実施していた。
  1990年入管法改正により日系3世まで就労制限なし、家族帯同自由の定住者として在留資格が認められて以来、私の地元静岡県でも、自動車産業集積都市を中心に定住が進んだ。 浜松市は、他の自治体との情報共有を目的に多文化集住都市会議を呼びかけるなど、多文化共生社会づくりに努力し30年、現在当初の国際課は多文化共生課に名称変更している。 多文化集住自治体では、規模を問わず、子どもたちへの教育支援や地域社会での暮らしの相談など複数言語で対応する仕組みを整備し、教育・医療はじめ日常の支援活動は、 官民連携で実施している。来年度全国約100ヶ所に多文化共生総合相談ワンストップセンターが設置予定であるが先行自治体の教訓を学ぶべきである。 多文化共生社会を実現する上で、国、自治体、自治組織、民間支援団体、さら市民社会、個人などのマルチステークホールダ―による官民連携パートナーシップの構築が重要である。 日本社会と親世代を繋ぐ人材として、日本で生まれ、教育を受けた外国籍の子供たちなど、若い世代の活躍を期待したい。