よくわかるSDGs講座シリーズ | アジア・アフリカの保健医療の現場を中心に、SDGsの全体像を習得し、企業・教育現場・市民社会などでSDGsを推進するためのヒントを探すための講座シリーズです。

パネルディスカッション3 貧困対策としての新たな投資

近藤哲生(国際連合開発計画(UNDP)駐日代表) ×  木原誠二(衆議院議員 自民党持続可能な開発目標(SDGs)外交議連事務局長)



【近藤】  本日のテーマである「貧困対策としての新しい投資」としては、SDGsに資するような取り組みが必要である。 市場経済の拡大とともに貧富の格差や気候変動など世界で歪みが広がる中、SDGsは地球や社会を持続可能なものにするための新たな価値基準として生まれた。 企業は、営利のみを優先する姿勢では自らの持続と繁栄が不可能と判断。すでに舵を切り、ソサエティ5.0の実現とSDGs達成を経営理念に据え、 ESG投資に配慮した事業を行う動きが加速している。民間投資の質が変わる一方で、国や自治体などの行政は、持続可能な地球と社会をつくるためにどのように変革を興し、 新しい投資をすれば良いか。
  SDGsには17の目標があるが、これらは独立した一つ一つの目標ではなく互いに影響し合っている。例えばSDGs3という健康に関する目標を一つ例にとると、 ローレンス・サマーズ(元米財務長官・元ハーバード大学学長)達の2013年のランセットの論文ではユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)へ投資、 すなわち貧困層の健康に投資しようと言った。これは援助ではなくて投資を促すものだという点で画期的だった。同じだけの投資資金があるのであれば、 貧困層への医療サービスへのアクセスを高めることで貧困層が健康に働けるようになる、十分な教育を受けてより高度な技能を得ることで価値の高い労働力が増え国力が高まり税収も増える、国が安定的に発展するアプローチである。 つまりSDGs3に投資することはSDGs1やSDGs4、SDGs8への投資ともなり投資の何倍ものリターンを生むことにもなる。税金は国民から国の未来への投資であり、 そのリターンとして持続可能な社会が実現できるようにしなければならない。例えば貧困対策の代表的な施策としては生活保護がまず挙げられるが、生活保護では格差は是正できない。 そこで、これまでにない形でSDGsに軸足を置いて貧困層に働きかけるような民間のイノベーティブなアイデアやスタートアップへの投資、 あるいは官民パートナーシップのような形での投資を行うことを提案したい。