よくわかるSDGs講座シリーズ | アジア・アフリカの保健医療の現場を中心に、SDGsの全体像を習得し、企業・教育現場・市民社会などでSDGsを推進するためのヒントを探すための講座シリーズです。

パネルディスカッション1 保健(感染症)

安田二朗(長崎大学感染症共同研究拠点教授 熱帯医学研究所教授) ×  武見敬三(参議院議員 自民党国際保健戦略特別委員会委員長)



【武見】 SDGsは169のターゲットと17の目標が有り、多分野横断的な政策立案で多分野横断的な解決をしていくアプローチが無ければ、2030年までに目標達成は不可能である。 それを踏まえユニバーサル・ヘルス・カバレッジを提案し推進してきたが、政策決定の迅速さが重要である。例えば、西アフリカにおけるエボラ出血熱アウトブレイクの際、日本政府には、 危険な感染症に関する多分野横断型の政策決定を行う体制がなく即応できなかった。その後、内閣官房に国際保健医療戦略室を立ち上げ、感染症担当の部屋をつくり、 大規模な感染症に対する体制を作った。しかし、中小規模の事象に対応する危機管理体制はまだだったので、 コンゴ民主共和国のエボラ出血熱アウトブレイクのときも迅速な対応ができなかった。治療薬の提供については、米国は3日で対応したが日本は1ヶ月程度を要した。 しかし、中小規模の感染症は世界中に多くあり、全てに関わることは到底できず、また、日本がどれに対応すべきかの判断は非常に難しいものである。
  国内のシーズの把握は厚生労働省の結核感染症課が担当し、国際感染症研究推進専門官といった担当者を置き平時からシーズの情報収集を行う体制になっている。 自衛隊の派遣については、感染症対応のため、紛争地域に自衛隊を治安維持の目的で出動させることは不可能である。それをするためには防衛大綱の改正が必要になる。 BSL4の施設は必要である。日本のBSL4を必要とする実験は海外で行われており、危険な感染症に関わる研究を遅らせている。 日本におけるBSL4施設は武蔵村山に30年近く前に完成したが、住民の反対運動も有りまだ稼動していない。現在、長崎大学が日本で2つ目のBSL4施設を建設中である。 これは100億位のお金で作るが、更に7億から10億位の通常の経費が必要になる。運営のためには、そのような通常経費の責任を国が持つ必要があるが、それと共に、 現地の住民の方々の理解を得るという努力を一緒にして頂くことが、とても大切であると考えている。また、施設が全国に4ヶ所は無いと、日本はいざというときに対応できない。 残り2ヶ所が関西と東北(北海道)の合計4ヶ所位になれば、日本に危険な感染症が発生したとき、地理的にも時間的にもかなり即応体制ができると思う。