よくわかるSDGs講座シリーズ | アジア・アフリカの保健医療の現場を中心に、SDGsの全体像を習得し、企業・教育現場・市民社会などでSDGsを推進するためのヒントを探すための講座シリーズです。

第3回講座 へき地・離島医療

講演1「離島医療はおもろいで!~仲間づくり、仕組みづくり~」
白石吉彦(隠岐広域連合立 隠岐島前病院 院長)


【講演要旨】 当院は日本海に浮かぶ人口5,763人、高齢化率43%(2019.1.31現在)の隠岐(おき)諸島(しょとう)島前(どうぜん)地区にある。この地域には3つの公立診療所と当院があり、開業医はない。当院は44床、常勤総合診療医7名で1.5次救急を担う。
 救急に関しては、診療所からの紹介はすべて受け入れて、当院でできることは行い、できないことは適切に高次医療機関へ紹介する。必要に応じてドクターヘリや防災ヘリコプターなどを利用し、年間約25件の緊急ヘリコプター搬送がある。よくある疾患として高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病、風邪や腹痛といった急性疾患、小児、そしてエコーを駆使しながら運動器の外来診療を行う。
 入院加療で治療が終了した場合は退院となるが、本人のADLの低下、家族の介護力の問題などで必ずしもスムースな在宅移行ばかりではない。そうした問題を解決するために1998年よりサービス調整会議という名前の合同会議を行っている。月に2回病院内で、夕方に病院外から地域包括ケアセンター職員、ケアマネジャー、ヘルパー、デイサービス担当者、ショートステイ担当者、小規模多機能スタッフ、福祉用具貸与業者などが、院内からは医師全員、訪問看護師、病棟・外来看護師、リハビリスタッフが参加する。すでに20年の歴史があり、制度としての介護保険制度や地域包括支援センターがあとからできており、当町での取り組みの追い風になっている。  
 救急という医療の入り口があり、急性期から慢性期の入院医療があり、医療の出口としての福祉を必要とする生活がある。そして予防活動としての保健活動がある。そうしたものを一体的に提供できることが当地区での地域包括ケアであると考えている。
 こうした医療看護、そして福祉との連携の在り方などを発信し、後進への教育に力を入れることにより数多くの医療者が島を訪れ、職員確保につながっている。

動画(講演1)の視聴



講演2「長崎の離島・へき地からみえる医療の姿~これまでとこれから~」
調漸(へき地病院再生支援・教育機構機構長 教授 / 長崎大学学長特別補佐)


【講演要旨】 へき地病院再生支援・教育機構の活動を紹介した。長崎県平戸市に教育拠点を持ち平成16年に顕在化した医師不足、特に周辺地域と云われるへき地の病院に対応すべく17年から活動している。急速に人口減少が進んでおり、へき地の常勤医数も減少し続けている。医師数の偏在に加え産婦人科、小児科専門医もいない。
 へき地でこそ輝く在宅医療、地域リハビリを組み込んだ地域医療初期研修は関東、関西から希望が多く、平戸市内の民間病院等に呼びかけコンソーシアムを結成、常に7から10名の研修医が学んでいる。
 へき地の医師不足対策としてカナダとオーストラリアの家庭医が大きな役割を持ち医師養成にへき地の教育機関の活用している現状を紹介した。
 最後に医師不足地域でも特定健診受診勧奨、地域密着型の医療、地域リハなどの魅力的な医療ができ、健康寿命の延伸に期待できることを紹介した。

動画(講演2)の視聴